5年間の別居は離婚できる? 裁判で離婚が認められる条件と成功の鍵

別居期間が5年を超えると、「もう離婚できるのでは?」と考える方は少なくありません。しかし、ただ別居期間が長いだけで、自動的に離婚が成立するわけではありません。特に裁判離婚となると、法律で定められた厳格な要件を満たす必要があります。
この記事では、5年別居離婚を考えている方のために、裁判で離婚が認められるための条件、必要な証拠、そして知っておくべき法律の知識について詳しく解説します。長期の別居から離婚を成功させるための具体的なステップと、弁護士に相談するメリットについてもご紹介します。
目次
5年間の別居は離婚理由になる?
結論から言うと、別居5年という期間そのものが、法律上の離婚理由として認められるわけではありません。
日本の法律では、離婚は以下の3つの方法で成立します。
- 協議離婚: 夫婦間の話し合いで合意し、離婚届を提出する方法
- 調停離婚: 家庭裁判所の調停委員を交えて話し合う方法
- 裁判離婚: 裁判官が判決を下す方法
長期の別居の場合、多くは話し合いで合意に至らず、調停を経て裁判へと進むケースがほとんどです。そして、裁判離婚では、民法第770条1項に定められた以下の5つの法定離婚事由のいずれかに該当する必要があります。
- 配偶者に不貞な行為があったとき
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき
- 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき
別居5年という状況は、この**「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当するかどうかが争点となります。長期にわたる別居は、夫婦の婚姻関係が破綻**していることを示す有力な証拠となり、裁判所が離婚を認める重要な判断材料の一つとなります。
婚姻関係の破綻とは?
婚姻関係の破綻とは、「夫婦としての共同生活が回復不能なほどに壊れており、もはや同居や協力扶助義務を果たすことが期待できない状態」を指します。
長期の別居は、この「婚姻関係の破綻」を客観的に示す最もわかりやすい事実です。
裁判所は、単に別居期間の長さだけでなく、以下の要素を総合的に考慮して判断します。
- 別居に至った経緯と原因: 夫婦のどちらに責任があるか、なぜ別居することになったのか
- 別居中の夫婦関係: 連絡頻度、交流の有無、協力関係の有無
- 子どもの有無と養育状況: 子どもの年齢、親権、養育費の支払い状況
- 別居期間中の経済的状況: どちらかが生活費(婚姻費用)を負担していたか
- 離婚意思の強さ: 双方の離婚意思はどれくらい強いか
これらの要素を客観的に証明する別居証拠を集めることが、裁判離婚を成功させる上で非常に重要になります。
裁判離婚の成立要件:5年別居でも認められないケース
長期の別居は「婚姻関係の破綻」を示す重要な証拠となりますが、裁判離婚が常に認められるわけではありません。特に以下の2つのケースでは、離婚が認められない可能性が高くなります。
- 未成熟な子どもがいる場合
- 有責配偶者からの離婚請求の場合
1. 未成熟な子どもがいる場合
裁判所は、子どもの福祉を最優先に考えます。
「未成熟子」とは、一般的に経済的に自立していない子どもを指し、幼い子どもや、重い病気・障害を持つ子ども、大学などに通っている子どもなどが含まれます。
別居期間が長くても、未成熟な子どもがいる場合、裁判所は「離婚によって子どもが大きな精神的・経済的負担を負うことになる」と判断し、離婚請求を棄却する可能性があります。
2. 有責配偶者からの離婚請求の場合
「有責配偶者」とは、離婚の原因を作った側の配偶者のことを指します。
たとえば、不貞行為や悪意の遺棄(正当な理由なく同居義務や生活費を支払う義務を放棄すること)などがこれにあたります。
日本の裁判所の判例では、原則として有責配偶者からの離婚請求は認められていません。
これは、「自ら婚姻関係を破綻させた者が、その責任を棚に上げて一方的に離婚を請求するのは信義に反する」という考えに基づいています。
ただし、例外的に有責配偶者からの離婚請求が認められるケースもあります。これは、以下の3つの条件をすべて満たす場合に限られます。(最高裁判所昭和62年9月2日判決)
- 夫婦の別居期間が相当の長期間に及んでいること
- この「相当の長期間」の目安が、過去の判例から「概ね10年以上」とされています。
- 別居5年という期間は、この条件を満たすにはまだ短いと判断される可能性が高いです。
- 未成熟な子どもがいないこと
- 子どもがすでに成人し、経済的に自立していることが条件となります。
- 相手方配偶者が、離婚によって精神的・社会的・経済的に過酷な状態に置かれないこと
- 離婚後も相手が自立して生活できる経済力があるか、健康状態に問題はないかなどが考慮されます。
もしあなたが不貞行為や悪意の遺棄などで別居に至った有責配偶者である場合、5年別居では裁判離婚は難しい可能性が高いでしょう。
この場合、相手が離婚に同意してくれるよう、離婚条件(財産分与、慰謝料など)を有利にするなどの交渉が必要になります。
別居5年で離婚を成功させるための具体的なステップ
別居5年を迎え、いよいよ離婚を決意した場合、以下のステップで準備を進めていきましょう。
1. 婚姻関係が破綻している証拠を収集する
裁判離婚を有利に進めるためには、婚姻関係が破綻していることを客観的に示す証拠が不可欠です。
特に、以下の証拠は重要です。
- 別居の開始時期がわかる証拠: 住民票、賃貸借契約書、転居時の宅配便の伝票、配偶者とのやり取りのメールやLINEなど。
- 別居合意書の有無: 夫婦で別居合意書を作成している場合、別居の事実だけでなく、お互いに別居に同意していたことを示す有力な証拠となります。
- 別居中のやり取りの記録: ほとんど連絡を取っていない、生活費の受け渡しがないなど、夫婦としての関係性が失われていることを示すメールやLINEの履歴。
- 生活費(婚姻費用)の支払い状況: 支払いの記録、または支払われていないことがわかる記録。
これらの証拠は、裁判官が判断する際の重要な材料となります。
2. 離婚調停の申立てを行う
いきなり裁判を起こすことはできません。裁判離婚の前には必ず離婚調停を経る必要があります(調停前置主義)。
調停では、調停委員が夫婦それぞれの言い分を聞き、解決策を探ります。
別居期間が長いため、相手が調停に出席しない可能性もありますが、調停を申し立てておくこと自体が「離婚の意思が固い」という証拠にもなり、その後の裁判を有利に進めることにつながります。
3. 財産分与と生活費の請求について知っておく
別居期間が長期にわたると、財産分与や生活費(婚姻費用)の請求についてもしっかりと理解しておく必要があります。
- 財産分与: 夫婦が結婚生活中に築いた財産を公平に分けることです。別居中に築いた財産は原則として分与の対象外となりますが、別居中も収入を共有していたケースなどでは例外もあります。
- 財産分与の時効: 離婚が成立した日から2年で時効となります。離婚後速やかに手続きを進める必要があります。
- 生活費(婚姻費用)の請求: 別居中も夫婦である以上、収入が多い方が少ない方へ生活費を支払う義務があります。これは離婚が成立するまでの義務です。
- 別居期間中の生活費の請求: 別居中の生活費をさかのぼって請求することも可能ですが、一般的には請求した時点から支払いが認められるケースが多いです。
弁護士に相談するメリット
5年別居という状況で離婚を考える場合、専門家である弁護士に相談することが、スムーズな離婚につながる最も確実な方法です。
弁護士に相談する主なメリットは以下の通りです。
- 法的な視点からのアドバイス: あなたのケースで裁判離婚が認められる可能性や、必要な証拠について、法律に基づいた正確なアドバイスがもらえます。
- 証拠収集のサポート: どのような証拠を集めれば良いか、具体的にアドバイスしてもらえます。
- 離婚調停・裁判の手続き代行: 複雑な書類作成や裁判所での手続きをすべて任せることができます。
- 相手との交渉: 相手が離婚に同意しない場合でも、専門家として毅然と交渉を進めてもらえます。
- 有責配偶者による離婚請求のサポート: あなたが有責配偶者である場合でも、過去の判例などを踏まえた上で、離婚を成立させるための具体的な戦略を立ててくれます。
別居期間が長くなると、感情的なすれ違いも大きくなりがちです。専門家を味方につけることで、冷静に、かつ戦略的に離婚を進めることができます。
まずは一度、弁護士に相談してみることを強くお勧めします。
当事務所のサービス内容や料金プランについては、こちらからご確認いただけます。
お問い合わせはこちらのフォームからお気軽にどうぞ。
別居に関するよくある疑問と判例
ここでは、長期別居に関するよくある質問と、実際の判例を交えて解説します。
Q1. 5年別居で離婚が認められた判例はありますか?
A. あります。ただし、単純に「5年別居したから」という理由だけではありません。
過去の別居期間判例を見ると、5年以上の別居期間に加え、以下のような事情が総合的に考慮されています。
- 夫婦間の交流が完全に途絶えている
- 相手が生活費を一切支払っていなかった(悪意の遺棄)
- 子どもがすでに成人している
- 双方ともに離婚の意思が固い
これらの要素が複合的に絡み合うことで、5年別居でも離婚が認められるケースがあります。
Q2. 別居期間を短縮して離婚を成立させる方法はありますか?
A. 基本的に、別居期間を意図的に短縮請求することはできません。**
別居期間は、あくまで「婚姻関係の破綻」を証明するための客観的な事実であり、期間を操作できるものではないからです。
しかし、別居期間が短くても離婚が認められるケースはあります。
たとえば、以下のような場合です。
- 配偶者のDVやモラハラが原因で別居に至った
- 配偶者の不貞行為が原因で別居に至った
これらは、別居期間が短くても、婚姻関係の破綻を明確に示す重大な事由となるため、裁判で離婚が認められる可能性が高くなります。
Q3. 別居中に不貞行為をしてしまった場合、離婚は難しくなりますか?
A. はい、非常に難しくなります。
別居中の不貞行為も、有責配偶者とみなされる可能性が高いです。
特に、相手が不貞行為を知り、それを理由に離婚を拒否した場合、裁判で離婚を成立させるのは困難になります。
不貞リスクは、別居中に十分に注意しなければならないポイントです。
Q4. 離婚するまでに、財産を隠されたり、使い込まれたりしないか不安です。
A. 財産分与の対象となる財産は、原則として別居を開始した時点のものが基準となります。
そのため、別居開始後の財産の使い込みや隠し財産については、原則として財産分与の対象にはなりません。
しかし、預貯金や不動産など、財産分与の対象となるものが別居開始後に隠されたり、処分されたりするリスクはゼロではありません。
弁護士に依頼すれば、財産の調査や保全手続きをサポートしてもらえます。
まとめ:長期別居からの離婚は専門家との二人三脚で
5年別居という期間は、離婚を考える上で一つの大きな節目となります。
しかし、この期間だけで自動的に離婚が成立するわけではありません。
特に裁判離婚を目指す場合は、婚姻関係の破綻を客観的に示す証拠を十分に集め、法律の専門家である弁護士と二人三脚で進めていくことが不可欠です。
まずは、あなたの現在の状況を正確に把握し、どのように進めていくべきか、専門家である弁護士に相談することから始めましょう。
参考URL
- 日本弁護士連合会 | 離婚の基礎知識
- 離婚の種類や手続き、法律上の要件について、弁護士会の視点からわかりやすく解説しています。
- https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/jfba_attorneys/guide/general/divorce.html
- 裁判所 | 夫婦関係調整調停(離婚)
- 離婚調停の手続きや流れについて、裁判所の公式サイトで詳しく説明しています。
- https://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/minzi_section20/hutuu_h2/index.html
- 法務省 | 離婚届の提出について
- 離婚届の書き方や提出に必要な書類など、手続きに関する情報が掲載されています。
- http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07.html
- 一般社団法人 日本離婚カウンセラー協会 | 離婚の専門家と考える別居期間
- 別居期間と離婚の関係性について、専門家の視点から解説しています。
- https://rikon-counselor.jp/blog/divorce-period/
- 厚生労働省 | 令和3年度離婚件数等の概況
- 日本の離婚に関する最新の統計データが掲載されており、社会的背景を理解するのに役立ちます。
- https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai21/dl/gaikyou.pdf
※本記事の一部はAIで作成しております。AIで作成された文章には不正確な内容が含まれることがございます。予めご了承くださいますようお願い申し上げます。

