離婚と退職金:損をしないための全知識と計算方法

「離婚」という言葉を耳にすると、まず頭をよぎるのは子どものこと、そしてお金のことではないでしょうか。特に、夫が長年勤めている場合、退職金が多額になることも珍しくありません。しかし、「退職金は夫のものだから、自分には関係ない」と諦めてしまう方もいらっしゃるようです。

実は、退職金も財産分与の対象です。この記事では、離婚時に退職金をしっかり受け取るための知識を、わかりやすく解説します。


財産分与とは?退職金が対象になる理由

離婚の際の財産分与とは、婚姻中に夫婦で協力して築き上げた財産を、離婚時に公平に分け合うことです。この「夫婦で協力して築き上げた財産」のことを共有財産と呼びます。

例えば、預貯金、生命保険、不動産、自動車などが共有財産に該当します。そして、夫婦共同生活を維持する上で、夫が会社員として働き、妻が専業主婦として家事や育児を担うというケースは少なくありません。この場合、夫の退職金は、妻の内助の功によって得られたものと考えることができます。そのため、夫の給与が共有財産になるのと同じように、退職金も共有財産として扱われるのです。


退職金が財産分与の対象になる3つの条件

退職金は原則として財産分与の対象になりますが、どのようなケースでも必ず分与されるわけではありません。退職金が財産分与の対象になるためには、主に以下の3つの条件が重要視されます。

  1. 退職金がすでに支払われている、もしくは近い将来に支払われる見込みがある
  2. 退職金の算定対象期間に婚姻期間が含まれている
  3. 退職金が給与の後払いとしての性質を持つ

1. 退職金がすでに支払われているか、近い将来に支払われる見込みがあるか

退職金がすでに支払われている場合は、財産分与の対象となることが明確です。一方で、まだ退職していない、いわゆる「退職前離婚」の場合、退職金を受け取れるかどうかは、その見込みによって判断されます。

裁判所の判断基準としては、一般的に「退職まであと数年」といった、近い将来に退職することが確実視されるケースであれば、財産分与の対象になりやすい傾向にあります。これは、離婚後に退職金が支払われる可能性が高く、その額も概算できるためです。具体的な年数は決まっていませんが、おおよそ10年以内が目安とされることが多いです。

2. 退職金の算定対象期間に婚姻期間が含まれているか

退職金は、勤続年数に応じて支払われることが一般的です。そのため、退職金の算定期間に、夫婦が一緒に生活していた婚姻期間が含まれている必要があります。

例えば、夫が会社に入社した後に結婚した場合、入社から離婚までの婚姻期間が退職金の算定対象となります。夫が結婚前から働いている場合、結婚前の期間は共有財産とはみなされないため、その期間分の退職金は財産分与の対象にはなりません。

3. 退職金が給与の後払いとしての性質を持つか

退職金には、功労報償金(長年の功績に対する褒賞)としての性格を持つものと、賃金の後払い(給与の一部が後払いされている)としての性格を持つものがあります。

多くの企業の退職金制度は、賃金の後払いとしての性格が強いと考えられています。そのため、退職金制度が就業規則等で明確に定められており、勤続年数に応じて算出される場合は、財産分与の対象になりやすいでしょう。


退職金の財産分与における計算方法

退職金をどのように計算し、分与するのかは、離婚の状況によって異なります。ここでは、代表的な3つのケースにおける計算方法と注意点を解説します。

ケース1:離婚時にすでに退職金を受け取っている場合

このケースが最もシンプルです。すでに受け取った退職金は、預貯金などと同様に共有財産として扱われます。

計算式:受け取った退職金の額 ÷ 2

例えば、夫が退職金として1,000万円を受け取っていた場合、その半分の500万円が分与の対象となります。ただし、退職金を受け取った後に使い込みや財産隠しがあった場合、その分も考慮して計算する必要があります。

ケース2:離婚時に退職が近い(退職前離婚)場合

このケースでは、まだ受け取っていない退職金をどのように評価するかがポイントとなります。一般的には、以下のいずれかの方法で計算します。

A. 会社の就業規則に基づき、自己都合退職した場合の退職金見込み額を算出

この方法が最も一般的です。離婚時点での勤続年数に基づき、就業規則に定められた退職金規定に従って、自己都合退職したと仮定した場合の退職金見込み額を計算します。

計算式:退職金見込み額 × (婚姻期間 ÷ 勤続期間) × 1/2

例えば、勤続期間30年、婚姻期間15年で離婚する場合、退職金見込み額が2,000万円だったとすると、

2000万円×(15年÷30年)×1/2=500万円

となり、分与額は500万円となります。

B. 将来的に支払われる予定の退職金額を元に計算

夫の退職が数年以内に迫っている場合など、将来受け取るであろう退職金の額が概算できる場合に用いられることがあります。この場合、将来の退職金から中間利息分を差し引くなど、複雑な計算が必要になることがあります。

どちらの方法を用いるかは、状況によって異なりますが、まずは就業規則に基づいた計算を試みるのが良いでしょう。


ケース3:退職まで期間がある場合

夫がまだ若く、退職まで10年以上あるようなケースでは、退職金が財産分与の対象にならないと判断される可能性が高くなります。この場合、将来の退職金は不確定要素が多く、具体的な額を算出することが困難なためです。

しかし、あくまで「可能性」であり、絶対に対象にならないわけではありません。夫婦の婚姻期間や、退職金制度の内容などを総合的に考慮して判断されるため、個別のケースで弁護士に相談することをお勧めします。


離婚前に知っておくべき3つの注意点

退職金の財産分与をスムーズに進めるためには、事前の準備が重要です。特に以下の3つの点に注意してください。

1. 財産分与の対象となる財産を把握する

退職金だけでなく、預貯金、不動産、生命保険、有価証券など、すべての共有財産をリストアップしましょう。財産の種類と金額を正確に把握することが、公平な財産分与の第一歩です。財産隠しを防ぐためにも、早めに情報収集を始めることが大切です。

2. 弁護士に相談するタイミング

退職金は金額が大きくなることが多いため、専門家である弁護士に相談することをお勧めします。特に、相手が財産分与に非協力的だったり、計算方法で揉めたりする可能性がある場合は、早めに相談することでトラブルを未然に防ぐことができます。

3. 退職金の仮差押え

「退職金が支払われる前に離婚が成立して、相手が使い込んでしまうのでは?」と不安に思う方もいるかもしれません。そのような場合は、裁判所に「退職金の仮差押え」を申し立てることができます。これにより、相手が退職金を受け取っても自由に使うことができなくなり、財産が保全されます。


熟年離婚と退職金・年金分割

長年連れ添った夫婦が離婚する熟年離婚の場合、退職金は生活を立て直す上で非常に重要な役割を果たします。特に、夫が長年勤め上げた会社員であった場合、退職金が数千万円に上ることもあります。

また、熟年離婚においては「年金分割」も重要な論点となります。年金分割とは、婚姻期間中の厚生年金・共済年金の記録を夫婦で分け合う制度です。年金分割をすることで、将来受け取れる年金額を増やすことができ、離婚後の生活基盤を安定させることにつながります。

退職金と年金分割を合わせることで、離婚後の生活設計が大きく変わるため、熟年離婚を考えている方は両方をセットで検討することが不可欠です。


まとめ:損をしない離婚のために

離婚と退職金は切っても切り離せない関係にあります。

  • 退職金は共有財産であり、財産分与の対象になる可能性がある。
  • 退職金がすでに支払われている場合はもちろん、退職まで近い将来であれば分与の対象となる可能性が高い。
  • 計算方法は、婚姻期間と勤続期間の割合で算出するのが一般的。
  • 財産分与を有利に進めるためには、早めの情報収集と専門家への相談が不可欠。

離婚は人生の大きな転機です。特に、お金の問題は今後の生活を左右するため、正しい知識を持って、後悔のない選択をすることが大切です。

もし、退職金の計算方法や相手との交渉で不安を感じたら、一人で悩まずに専門家へ相談してみてください。当事務所でも、離婚手続きや財産分与に関するご相談を受け付けております。ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。


参考URL一覧

タイトル概要リンク
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※本記事の一部はAIで作成しております。AIで作成された文章には不正確な内容が含まれることがございます。予めご了承くださいますようお願い申し上げます。

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