養育費の相場と決め方|算定表の見方と離婚協議書への書き方【2026年改正対応】

養育費の金額を書面で確認する親と子ども

養育費は、離婚後に子どもを育てていくうえで生活の土台になるお金です。にもかかわらず、金額や支払い期間をあいまいなまま離婚してしまい、数年後に支払いが途絶えて困る——という相談は後を絶ちません。

この記事では、養育費の相場の調べ方、金額の決め方、そして2026年4月1日に施行された改正民法で新しく始まった制度までを整理し、最後に「離婚協議書にどう書けばよいか」を条項例つきで解説します。

養育費とは何か——「親の義務」であって「子の権利」

養育費とは、経済的に自立していない子どもが、親と同じ水準の生活を送るために必要な費用のことです。衣食住の費用だけでなく、教育費、医療費、適度な娯楽費までが含まれます。

重要なのは、養育費を負担する義務が「生活保持義務」と呼ばれる、非常に強い義務だという点です。これは「自分に余裕がある範囲で助ける」という性質のものではなく、自分の生活水準と同じ水準を子どもにも保障する義務を意味します。したがって「収入が少ないから払えない」という理由だけで、支払義務そのものが消えることはありません。

また、養育費は親権者が相手からもらう「権利」ではなく、あくまで子どものための費用です。そのため、親同士が「養育費はいらない」と合意していたとしても、子ども自身が扶養を求める権利まで失われるわけではありません。


養育費の相場は「算定表」で調べる

養育費の金額は、当事者が合意すればいくらでも構いません。ただし、話し合いの出発点として全国の家庭裁判所が使っているのが「養育費・婚姻費用算定表」です。これは令和元年(2019年)12月23日に最高裁判所の司法研修所が公表したもので、現在も実務の標準として使われています。

算定表は、裁判所のウェブサイトで誰でも無料で確認できます。使い方は次のとおりです。

  1. 子どもの人数と年齢(0〜14歳/15歳以上)に対応する表を選ぶ
  2. 縦軸で「支払う側(義務者)」の年収を探す
  3. 横軸で「受け取る側(権利者)」の年収を探す
  4. 交差する枠が、月額の目安(2万円刻みの幅で示される)

年収は、会社員なら源泉徴収票の「支払金額」(税込の総額)、自営業なら確定申告書の「課税される所得金額」を使います。給与所得者と自営業者では表の見る欄が異なるため、ここを間違えると金額が大きくずれます。

算定表だけで決められないケース

算定表は「標準的な家庭」を前提にしているため、次のような事情は表に反映されていません。これらは算定表の額に上乗せする形で個別に取り決めるのが一般的です。

  • 私立学校の学費、大学の入学金・授業料
  • 塾や習い事など、夫婦が同意していた教育費
  • 持病の治療費、障がいに関わる費用
  • 義務者に多額の住宅ローン負担がある場合
  • 再婚して扶養家族が増えた場合

特に進学費用は、後から「そんな約束はしていない」と揉めやすい代表格です。「大学等に進学した場合の費用は別途協議する」という一文を入れておくだけでも、将来の話し合いの土台になります。


【2026年4月施行】改正民法で養育費のルールが変わりました

2024年5月に成立した改正民法が、2026年4月1日に施行されました。養育費に関わる部分で、実務上とても大きな変更が2つあります。

① 法定養育費——取り決めがなくても月2万円を請求できる

これまでは、養育費の取り決めをせずに離婚してしまうと、あらためて話し合いや調停が成立するまでの間、一円も受け取れませんでした。

改正により、取り決めがない場合でも、子ども1人あたり月額2万円を請求できる「法定養育費」の制度が新設されました。取り決めができるまでの間をつなぐ、暫定的・補充的な制度です。

ただし、次の点に注意が必要です。

  • 2026年4月1日以後に離婚した場合が対象です。それ以前に離婚した方は請求できません
  • あくまで暫定額です。算定表に基づく本来の金額はこれより高いことが多く、月2万円で満足せず、正式な取り決めを行うことが前提の制度です
  • 対象となる子どもの年齢には制限があります

② 先取特権——書面があれば差押えがしやすくなった

従来、相手が養育費を払わなくなったとき給与などを差し押さえるには、「債務名義」と呼ばれる公的な文書(強制執行認諾文言つきの公正証書、調停調書、判決など)が必要でした。単なる私文書の離婚協議書では、まず裁判を起こして判決をもらうところから始めなければならなかったのです。

改正により、養育費債権に「先取特権」という優先権が認められました。これにより、書面で養育費の取り決めがあれば、その書面をもって差押えの申立てができるようになり、他の債権者よりも優先して回収できる立場が与えられます。

この改正は、「離婚協議書という書面をきちんと残しておくこと」の価値を大きく高めるものです。口約束のままでは、この制度の恩恵を受けられません。

なお、先取特権は施行後に発生する養育費に適用されます。また、より確実に、かつ手続きの手間を抑えて回収したい場合は、従来どおり強制執行認諾文言つきの公正証書にしておく方法が有力な選択肢であることに変わりはありません。


養育費で決めておくべき5つの項目

「月5万円」とだけ決めて終わりにすると、後から必ず疑問が出てきます。次の5点はセットで決めてください。

項目決めておくことあいまいだと起きること
金額子ども1人あたりか、合計額か子が独立したとき減額幅で揉める
支払期間「20歳まで」「22歳に達した後の3月まで」など終期を明記成年年齢18歳との関係で解釈が割れる
支払日毎月何日までか遅延かどうかの判断ができない
支払方法振込先口座、振込手数料の負担者手数料分の不足が積み重なる
特別費用進学・入院時の負担割合高額な支出のたびに一から交渉になる

特に見落とされやすいのが支払期間の終わりです。2022年4月に成年年齢が18歳に引き下げられましたが、これによって養育費の支払いが自動的に18歳までになったわけではありません。大学進学を想定するなら、「22歳に達した後の最初の3月まで」といった書き方で、卒業時期に合わせて明記しておくのが安全です。


離婚協議書への書き方(条項例)

実際の離婚協議書では、次のような形で記載します。

第○条(養育費)
甲は乙に対し、長男○○(20××年×月×日生)の養育費として、20××年×月から同人が22歳に達した後の最初の3月まで、1か月金50,000円を、毎月末日限り、乙の指定する下記口座に振り込む方法により支払う。振込手数料は甲の負担とする。

2 甲および乙は、○○の進学、疾病、傷害その他の特別の費用を要する事情が生じたときは、その負担について別途協議する。

3 甲および乙は、物価の変動、当事者の再婚、収入の著しい増減その他事情の変更が生じたときは、養育費の額について別途協議する。

第2項・第3項のような「協議条項」を入れておくと、状況が変わったときに話し合いのきっかけを作れます。逆にこれがないと、相手から「決めたことがすべてだ」と言われて交渉の糸口を失うことがあります。


支払いが止まったときに備える

厚生労働省の調査でも、養育費を「現在も受けている」母子世帯は3割前後にとどまるという結果が続いています。取り決めをした時点では誠実に払うつもりでも、再婚や転職をきっかけに支払いが滞るケースは珍しくありません。

備えとして有効なのが、離婚協議書を強制執行認諾文言つきの公正証書にしておくことです。この一文があると、支払いが止まったときに裁判を経ずに給与などの差押えに進めます。養育費のような継続的な支払いこそ、公正証書にする価値が高い項目です。


養育費の取り決めを書面に残すサポートをしています

協議離婚相談室(佐藤事務所)では、離婚協議書・公正証書の作成をサポートしています。養育費の金額そのものは当事者の合意によって決まりますが、「決めた内容を、後から争いにならない形の文章にする」ことは、経験のある第三者が入ることで大きく変わります。

初回のご相談は無料です。メール・電話・LINEで、全国どこからでもご相談いただけます。

※本記事は一般的な情報提供であり、個別の事案についての法的助言ではありません。行政書士法に定められた法定業務は提携行政書士が行います。紛争性のある事案は弁護士へご相談ください。

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