離婚後、父親が親権を獲得するための条件とは?新しい共同親権制度についても解説

はじめに:離婚と親権、父親が直面する現実

離婚を考え始めたとき、多くの女性は「子どもと離れたくない」「親権は絶対に私が持ちたい」と強く願うのではないでしょうか。一方で、子どもを心から愛する父親にとっても、親権は譲れない重要な問題です。特に、現在は共同親権制度の導入が議論され、法律が大きく変わろうとしています。

「母親の方が親権を取りやすい」とよく言われますが、それは本当に事実なのでしょうか。父親が親権を獲得することは、本当に難しいことなのでしょうか。

この記事では、父親が親権を得るための具体的な条件や、親権を巡る裁判所の判断基準、そして2026年に施行される新しい共同親権制度について、分かりやすく解説していきます。

離婚後の子どもの将来を真剣に考える方々にとって、この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。


離婚後の親権はどうやって決まる?

離婚後の子どもの親権は、基本的に夫婦の話し合いである協議離婚で決定されます。しかし、双方が親権を主張して話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の離婚調停離婚裁判で決めることになります。

協議離婚での親権の決め方

協議離婚では、夫婦双方の合意があれば、どちらが親権者になっても問題ありません。親権者を決めてから離婚届を提出し、受理されると親権は確定します。

ただし、夫婦間の話し合いで合意に至らない場合、安易に「じゃあ、私が親権を譲ります」と結論を急ぐ必要はありません。後に調停や裁判になることも見据えて、冷静に話し合うことが重要です。

協議離婚の進め方や離婚協議書の作成方法については、こちらのトップページも参考にしてください。


なぜ「父親は親権を取りにくい」と言われるのか?

日本の現行法(民法766条)では、離婚後の親権は父母のどちらか一方が持つ単独親権が原則です。そして、実際に裁判や調停で親権が争われた場合、母親が親権者として指定されるケースが多いのが現実です。

なぜこのような状況になるのでしょうか。その最大の理由は、裁判所が親権者を決定する際の第一の判断基準が**「子の利益」**にあるからです。

一般的に、これまでの日本の社会構造では、母親が主な養育者として子どもの日常生活に関わってきたことが多いため、**「現状維持が子の利益にかなう」**という考え方が強く、母親が親権者として優先される傾向がありました。

しかし、これは決して「父親だから親権が取れない」というわけではありません。父親が親権を獲得するためには、母親よりも「子の利益」に貢献できることを客観的に証明する必要があります。


父親が親権を獲得するための5つの条件

父親が親権を主張する際、裁判所が特に重視するポイントは以下の5つです。

1. 監護実績(養育実績)

これは、子どもを実際に育ててきた実績のことです。

  • 子どもと過ごした時間の長さと質: 毎日の食事や入浴、遊び、勉強、寝かしつけなど、子どもの日常生活にどれだけ深く関わってきたか。
  • 子育てにおける役割分担: 夫婦でどのように子育てを分担してきたか。父親が主に子どもの世話をしていた期間や、保育園・学校への送迎、PTA活動などへの参加状況。

ポイント:「家計を支えるために働いていたから、子どもの世話は妻に任せていた」というだけでは、監護実績は弱いと判断される可能性があります。共働きで、夫婦が協力して子育てをしてきた場合は、父親の監護実績も高く評価される可能性があります。

2. 経済力と養育環境

親権者には、子どもを経済的に支える責任があります。

  • 安定した収入と住居: 養育費の支払い能力はもちろん、子どもが安心して暮らせる住居環境が確保できるか。
  • 子どもの教育環境: これまでの子どもの教育方針を継続できるか。転校の必要性や、塾・習い事などの環境を維持できるか。

注意点: 経済力があるというだけでは親権は認められません。いくら高収入でも、子どもと関わる時間がない、または養育の意思がないと判断されれば、親権は認められません。

3. 子どもへの愛情と養育の意思

これは、親権者として子どもを育てていく強い意思と愛情があるかどうかの判断です。

  • 離婚後の子育て計画: 誰が子どもの世話をするのか(祖父母の協力など)、病気になった時の対応、学校行事への参加など、具体的なプランがあるか。
  • 面会交流への寛容性: 相手方の親との面会交流権を尊重し、子どもと元配偶者との関係を良好に保つ努力をする意思があるか。

ポイント: 裁判所は、子どもの利益を第一に考えます。たとえ夫婦仲が悪くても、子どもにとっては両親から愛されていると感じることが重要です。相手方との円滑な面会交流を約束する姿勢は、裁判官に好印象を与えます。

4. 母親の状況

相手方の親、つまり母親に以下のような問題がないかどうかも考慮されます。

  • 心身の健康状態: 母親が精神的・身体的に不安定で、子育てが困難ではないか。
  • 育児放棄やDV・虐待の有無: 子どもに対して育児放棄や暴力(DV)、虐待などの事実があった場合は、母親が親権者として不適格と判断される可能性が高まります。この場合、父親が親権を獲得できる可能性は非常に高くなります。

5. 子どもの年齢と意思

  • 乳幼児・低年齢の子ども: 裁判所は、乳幼児や低年齢の子どもについては、母親が親権者となることが「子の利益」にかなうと判断する傾向が強いです。これは、母子の愛着形成が重要視されるためです。
  • 15歳以上の子ども: 15歳以上の子どもについては、子の意見聴取が義務付けられています。子ども自身の意思が親権者を決定する上で最も尊重されます。
  • 10歳以上の子ども: 10歳以上の子どもについては、裁判官や家庭裁判所調査官が子どもの意思を確認することが一般的です。

裁判官は、これらの要素を総合的に判断し、**「子の利益」**を最も満たせる親はどちらかを決定します。


離婚後の新しい選択肢:共同親権制度とは?

2024年4月に民法が改正され、2026年4月からは、離婚後の親権について**「単独親権」「共同親権」**を選択できるようになります。これは、日本の離婚制度における大きな変化です。

共同親権制度の概要

共同親権とは、離婚後も父母双方が共同で子どもの親権を持つ制度です。これにより、子どもの養育に関する重要事項(進学、医療行為など)は、父母双方の合意に基づいて決定されることになります。

ただし、共同親権はすべてのケースで適用されるわけではありません。以下の表で、単独親権と共同親権の違いを見てみましょう。

項目単独親権(現行法)共同親権(2026年4月施行)
親権者の数父母のどちらか一方父母の双方
決定方法夫婦の話し合いまたは裁判所夫婦の話し合いまたは裁判所
重要事項の決定親権者が単独で決定原則として父母の合意が必要
日常生活の決定親権者が単独で決定各親が単独で決定できる

※日常生活に関する事項(日々の食事や習い事など)は、共同親権の場合でも父母がそれぞれ単独で決定できます。

共同親権制度のメリットとデメリット

メリット

  • 両親の関わりが保たれる: 離婚後も両親が子育てに責任を持ち、子どもが両方の親から愛情を感じられる機会が増える。
  • 一方の負担軽減: 親権者として一人で子育ての全責任を負う負担が軽減される。
  • 養育費の確保: 共同親権により、父親の養育に対する意識が高まり、養育費の支払確保につながることが期待される。

デメリット

  • 合意形成の難しさ: 子どもの教育方針などで意見が対立した場合、スムーズな意思決定が困難になる可能性がある。
  • DV・虐待ケースでの問題: DV虐待の事実がある場合、共同親権にすることで被害者が加害者と関わり続けることを強制されるリスクがある。

注意点: 共同親権は、父母の合意がある場合、またはDV・虐待の事実がないと裁判所が判断した場合に認められるのが原則です。DVや虐待があった場合は、裁判所の判断により単独親権が指定されます。

共同親権の導入で父親の親権は増える?

共同親権制度の導入は、父親が親権を獲得するハードルを下げるというよりも、離婚後も子育てに深く関わりたいと考える父親にとって、新しい選択肢を与えるものだと言えるでしょう。

しかし、夫婦間の関係が悪化している場合や、子育ての方針で対立がある場合は、共同親権が円滑に機能しない可能性も十分に考えられます。


親権を巡る話し合いがまとまらない場合

協議離婚で親権について合意できない場合は、家庭裁判所での調停や裁判に進むことになります。

1. 家庭裁判所での離婚調停

離婚調停では、調停委員が夫婦それぞれの話を聞き、円満な解決を目指します。この段階では、家庭裁判所調査官が子どもの様子を調べ、監護環境や子どもの意思について調査を行います。

調停では、親権だけでなく、養育費や面会交流、財産分与などの問題も合わせて話し合われます。

2. 離婚裁判

調停でも合意に至らない場合、最終的に裁判官が判決を下して親権者を指定します。この段階では、双方が証拠を提出し、論理的に自分の主張を証明する必要があります。

  • 証拠の例:
    • 子どもの監護実績を示す写真や日記、連絡帳など
    • 経済力や養育環境を証明する収入証明書、住宅契約書など
    • 子どもの養育計画書

3. 子どもの引渡し調停

もし、一方が子どもを連れて家を出てしまった場合、引渡し調停や審判を申し立てることも可能です。これは、子どもを元の生活環境に戻すことを目的とした手続きです。


離婚後の養育費と面会交流

親権者でない親(非親権者)も、子どもを養育する義務と、子どもと会う権利があります。

養育費の支払い

養育費は、子どもの生活や教育のために必要な費用です。親権者が父親か母親かに関わらず、非親権者には養育費を支払う義務があります。

養育費の金額は、両親の収入や子どもの人数・年齢に応じて、家庭裁判所が定める算定表を基準に決定されることが一般的です。


まとめ:父親の親権、諦める必要はない

この記事では、父親が親権を獲得するための条件や、新しい共同親権制度について解説しました。

  • 父親が親権を獲得するためには、母親以上に「子の利益」に貢献できることを客観的に証明する必要がある。
  • 特に、監護実績や経済力**、子どもへの愛情、そして面会交流への寛容性が重要となる。**
  • 2026年4月施行の共同親権制度は、DV・虐待のケースを除き、離婚後も両親が共同で子育てに関わる新しい選択肢となる。

「父親は親権が取れない」と諦めてしまう前に、まずは自分に何ができるのか、子どもにとって何が一番幸せなのかを冷静に考えてみましょう。

離婚や親権に関するお悩みは、一人で抱え込まず、専門家に相談することをおすすめします。当事務所では、様々な離婚のケースに対応したサービスを提供しております。料金プランについてはこちらのページでご確認いただけます。

お問い合わせはこちらのWEBフォームからお気軽にどうぞ。


参考文献・参考サイト

厚生労働省

  • タイトル: 共同親権関係
  • 概要: 離婚後の子どもの親権に関する民法改正について、国会での審議状況や資料が掲載されています。
  • リンク: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_38848.html

法務省

  • タイトル: 民法等の一部を改正する法律案(子の利益を最優先する父母の協力の確保)
  • 概要: 共同親権制度を含む民法改正案の骨子や、法案の解説が詳細に記載されています。
  • リンク: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00366.html

裁判所

All About 離婚

  • タイトル: 離婚後の親権は父親が取れる?親権を取るための条件と手続きを解説
  • 概要: 父親が親権を獲得するための具体的な条件や、調停・裁判での手続きの流れについて分かりやすく解説されています。
  • リンク: https://allabout.co.jp/gm/gc/478544/

弁護士法人アディーレ法律事務所

  • タイトル: 離婚・親権問題
  • 概要: 離婚における親権問題について、弁護士の視点から法的知識や解決策が提供されています。
  • リンク: https://www.adire.jp/divorce/shinken/

※本記事の一部はAIで作成しております。AIで作成された文章には不正確な内容が含まれることがございます。予めご了承くださいますようお願い申し上げます。

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