離婚ADRとは？弁護士に依頼しない新しい離婚の選択肢

2025年8月18日 2025年8月17日

satojimusho

離婚を考えたとき、多くの方がまず思い浮かべるのは「協議離婚」か「裁判」かもしれません。しかし、実はその中間にある、より柔軟で話し合いを重視した新しい選択肢が存在します。それが、**ADR（裁判外紛争解決手続）**です。

ADRは、裁判所の手続きによらず、専門家である第三者の仲介によって当事者間の話し合いを進め、紛争を解決する仕組みです。離婚においても、このADRが注目されています。

1 離婚問題におけるADRのメリットとデメリット
- 1.1 メリット：柔軟な解決とプライバシーの確保
- 1.2 デメリット：合意の強制力と費用
2 離婚ADR機関の種類と選び方
3 離婚ADRの具体的な流れ：申立方法から合意書作成まで
4 裁判所の手続きと離婚ADRの違い
- 4.1 裁判所の調停とADRの比較表
5 離婚ADRはこんな方におすすめ
6 関連情報
- 6.1 離婚ADRに関する公的機関・専門家の情報
- 6.2 関連する当事務所のページ

離婚問題におけるADRのメリットとデメリット

離婚ADRは、裁判所の調停や訴訟とは異なる、独自のメリットとデメリットを持っています。この仕組みを理解することは、自分たちに合った解決方法を見つける上で非常に重要です。

メリット：柔軟な解決とプライバシーの確保

話し合いを尊重する柔軟な解決ADRの最大のメリットは、当事者間の話し合いを徹底的に尊重する点にあります。裁判所の調停や裁判では、法律に基づいた画一的な解決が求められがちですが、ADRでは、個々の夫婦の事情や希望に合わせた柔軟な解決策を探ることができます。例えば、養育費や面会交流、財産分与について、当事者間で納得できるまで話し合うことが可能です。
プライバシーの確保裁判は公開の法廷で行われるため、プライバシーが気になる方もいるでしょう。しかし、ADRは非公開の場所で行われるため、プライバシーが守られます。また、手続きも比較的簡便で、当事者双方の合意に基づいて進められます。
調停者を介した冷静な話し合い離婚の話し合いは感情的になりがちです。しかし、ADRでは、法律や心理学の知識を持つ専門家が調停者として間に入り、冷静な話し合いをサポートしてくれます。これにより、当事者だけでは進まなかった話し合いが円滑に進む可能性があります。
早期解決の可能性裁判は手続きが煩雑で、解決までに時間がかかることがあります。しかし、ADRは、当事者双方が合意すれば、比較的短期間で紛争を解決できる可能性があります。

デメリット：合意の強制力と費用

合意に法的強制力がないADRはあくまで当事者間の合意に基づいて進められるため、裁判所の判決のような法的強制力はありません。相手方が合意を破った場合、別途裁判を起こす必要があります。ただし、ADR機関によっては、作成した合意書を公正証書に対応させたり、法務大臣の認証を受けたADR機関（認証ADR）を利用することで、より確実な合意書を作成することが可能です。
費用がかかる裁判所の調停は比較的安価ですが、ADR機関によっては費用が発生します。料金体系は機関によって異なるため、事前に確認が必要です。当法務事務所では、サービス内容と料金プランを明確に提示していますので、ご検討の際はぜひご参照ください。
相手方の協力が必要ADRは、当事者双方が手続きに参加し、話し合いに応じる意思があることが前提です。相手方が話し合いを拒否したり、非協力的であったりする場合、ADRの利用は困難になります。

離婚ADR機関の種類と選び方

離婚ADRを提供する機関は多岐にわたります。それぞれに特徴があるため、自分の状況に合った機関を選ぶことが大切です。

1. 法律専門家が運営するADR機関

弁護士会などが運営するADR機関です。法律の専門家が関わるため、法的な観点から適切なアドバイスやサポートを受けることができます。

2. 民間のADR機関

弁護士以外の専門家（行政書士など）やNPO法人などが運営する機関です。個々の事案に合わせた柔軟な対応が期待できます。中には、SNS離婚相談ADRのように、オンラインでの相談に特化した機関もあります。

3. 離婚テラス

離婚テラスは、離婚に特化したADR機関です。弁護士や行政書士など、専門家が第三者仲介として関与し、離婚の話し合いをサポートします。土日対応ADRを行っている場合もあり、日中お仕事などで忙しい方でも利用しやすいのが特徴です。

4. 特定のADR分野に特化した機関

養育費協議や共同親権の話し合いなど、特定の分野に特化したADR機関も存在します。例えば、親権ADRでは、子どもの親権や面会交流について、子どもの福祉を第一に考えた話し合いをサポートしてくれます。

ADR機関選びのポイント

項目	ポイント
費用	料金体系が明確か、追加料金は発生しないか確認する。
調停者の専門性	弁護士、行政書士、カウンセラーなど、どのような専門家が関わっているか確認する。
手続きの進め方	どのくらいの期間で解決できるか、手続きの流れを事前に確認する。
対応時間	平日夜間や土日にも対応しているか確認する。
合意書の作成	合意書の作成や、公正証書対応などのサポートがあるか確認する。

離婚ADRの具体的な流れ：申立方法から合意書作成まで

離婚ADRの手続きは、機関によって多少異なりますが、一般的な流れは以下のようになります。

ステップ1：申立て

まず、ADR機関にADR申立方法を確認し、申立書を提出します。この段階で、ご自身の希望する条件や、これまでの経緯などを詳しく記載します。

ステップ2：相手方への連絡・承諾

申立て後、ADR機関が相手方に連絡を取り、ADR手続きへの参加を促します。相手方が承諾すれば、手続きが開始されます。

ステップ3：話し合いあっせん

調停者が間に入り、当事者双方の意見を聞きながら話し合いを進めます。話し合いあっせんを通じて、お互いの妥協点を探り、解決を目指します。

ステップ4：合意書の作成

話し合いがまとまったら、合意書作成に入ります。養育費、財産分与、慰謝料、年金分割など、離婚に伴うすべての条件を明確に記載します。この合意書は、後のトラブルを防ぐために非常に重要です。

ステップ5：公正証書の作成（任意）

作成した合意書を公正証書対応にすることで、より高い法的強制力を持たせることができます。公正証書に記載された金銭の支払い（養育費など）が滞った場合、裁判所の判決を経ずに強制執行が可能になります。

離婚の種類について詳しく知りたい方は、当法務事務所のトップページもご覧ください。

裁判所の手続きと離婚ADRの違い

離婚問題を解決する方法として、裁判所の調停や訴訟と、ADRが混同されがちです。しかし、両者には明確な違いがあります。

裁判所の調停とADRの比較表

項目	裁判所の調停	離婚ADR
手続きの根拠	家事事件手続法	裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律（ADR法）
調停委員	裁判所の非常勤職員	ADR機関が選任する専門家（弁護士、行政書士など）
法的強制力	調停が成立すれば、調停調書に法的強制力がある。	合意書に法的強制力はない（公正証書にすれば強制執行が可能）。
費用	比較的安価	機関によって費用が異なる
プライバシー	非公開	非公開
柔軟性	法律に基づいた解決が中心	当事者の意向を反映した柔軟な解決が可能

「調停前置」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。これは、離婚訴訟を起こす前に、まずは裁判所の調停を経なければならないという原則です。ADRは、この調停を経る前に利用することも、調停が不成立に終わった後に利用することも可能です。

離婚ADRはこんな方におすすめ

夫婦間の話し合いがうまくいかない方感情的になってしまい、冷静な話し合いができない、顔を合わせるのがつらいといった方には、第三者仲介が入るADRが有効です。
プライバシーを守って話し合いを進めたい方非公開の場で、周囲に知られることなく問題を解決したい方におすすめです。
柔軟な解決を望む方養育費や財産分与について、法律の枠を超えた当事者間で納得できる解決を望む方には、柔軟解決が可能なADRが適しています。
早期に解決したい方裁判の長期化を避け、できるだけ早く次の人生に進みたいと考えている方。
弁護士に依頼するか迷っている方弁護士に依頼する費用や心理的ハードルが高いと感じている方も、まずはADRを検討してみる価値があります。

離婚は、夫婦だけでなく、家族のためのADRでもあります。お子さんがいる場合、共同親権ADRのような仕組みを通じて、子どものことを第一に考えた話し合いを進めることができます。

離婚テラスは、皆様の人生の再出発をサポートします。もしご不明な点があれば、お気軽にお問い合わせください。当事務所のサービス詳細については、こちらのページをご覧ください。