離婚の割合から見る現代夫婦のリアル:統計データと向き合う

夫婦として共に歩む中で、ふとした瞬間に「もし離婚することになったら…」と頭をよぎることはありませんか?特に、身近な人が離婚を経験したり、テレビやネットで離婚に関するニュースを見聞きしたりすると、漠然とした不安を感じるかもしれません。この記事では、日本の離婚に関する統計データに注目し、その割合から見えてくる現代夫婦のリアルを深く掘り下げていきます。単なる数字の羅列ではなく、そこに隠された夫婦関係の本質や、離婚に至る原因、そしてその後の人生にまで焦点を当てて解説します。
目次
日本の離婚率の現状と推移
まず、日本の離婚率は現在どのような状況にあるのでしょうか。厚生労働省が公表している人口動態統計を見ると、離婚件数と離婚率の推移を把握することができます。
日本の離婚件数は、2002年の約29万件をピークに減少傾向にあり、近年は年間約18万件台で推移しています。離婚率(人口千対)も同様に、2002年の2.29から、2023年には1.42まで減少しています。
| 年次 | 離婚件数(件) | 離婚率(人口千対) |
| 1990 | 157,609 | 1.28 |
| 1995 | 199,347 | 1.60 |
| 2000 | 264,103 | 2.09 |
| 2002 | 289,304 | 2.29 |
| 2005 | 261,906 | 2.06 |
| 2010 | 251,378 | 1.98 |
| 2015 | 224,953 | 1.78 |
| 2020 | 193,251 | 1.54 |
| 2021 | 184,386 | 1.48 |
| 2022 | 179,096 | 1.44 |
| 2023 | 167,791 | 1.42 |
| 出典:厚生労働省「人口動態統計」各年次報告より筆者作成 |
このデータを見ると、一時期と比べて離婚件数は減少していることがわかります。しかし、これは単に「離婚する人が減った」と単純に捉えるべきではありません。この背景には、晩婚化や未婚率の上昇など、結婚そのものの割合が変化していることも影響している可能性があります。また、離婚に関する価値観の変化や、離婚後の社会的な支援体制の整備なども、この数字に影響を与えているかもしれません。
離婚する夫婦の「結婚生活継続期間」と「年齢」の割合
次に、離婚する夫婦がどのくらいの期間結婚生活を続けていたのか、そして離婚時の年齢はどのくらいなのかを見ていきましょう。これらのデータは、離婚に至るまでのプロセスや、夫婦関係における課題が顕在化しやすい時期を示唆している可能性があります。
結婚生活継続期間から見る離婚の割合
厚生労働省の人口動態統計特殊報告「離婚に関する統計」によると、離婚する夫婦の結婚生活継続期間は、以下のようになっています。
| 結婚生活継続期間 | 2010年 | 2015年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 |
| 5年未満 | 29.1% | 29.5% | 27.9% | 28.0% | 27.8% |
| 5~10年未満 | 21.0% | 21.6% | 22.1% | 22.0% | 22.0% |
| 10~15年未満 | 14.8% | 14.5% | 15.0% | 15.0% | 15.1% |
| 15~20年未満 | 10.3% | 9.9% | 10.3% | 10.4% | 10.5% |
| 20年以上 | 24.8% | 24.5% | 24.8% | 24.6% | 24.6% |
| 出典:厚生労働省「人口動態統計特殊報告 離婚に関する統計」各年次報告より筆者作成 |
この表から読み取れるのは、「結婚生活継続期間5年未満」が最も高い割合を占めていることです。新婚期と呼ばれるこの時期に、なぜ離婚に至ってしまう夫婦が多いのでしょうか。結婚生活が始まったばかりで、お互いの価値観や生活習慣の違いに直面し、調整がうまくいかないケースが考えられます。また、子育てが本格化する時期と重なることもあり、育児ストレスや役割分担の不満などが表面化しやすいのかもしれません。
一方で、「結婚生活継続期間20年以上」の割合も決して低くありません。これは熟年離婚と呼ばれるもので、子どもの独立をきっかけに夫婦関係を見つめ直し、それぞれの人生を歩む選択をするケースが多いとされます。長年連れ添った夫婦が離婚に至る背景には、長年のすれ違いや、これまで我慢してきた不満が積み重なった結果が考えられます。
離婚時の年齢から見る離婚の割合
次に、離婚する夫婦の離婚時の年齢を見てみましょう。
厚生労働省の「人口動態統計」によると、2022年の夫婦の平均離婚年齢は、夫が45.2歳、妻が42.6歳となっています。
より詳細な年齢層別の割合については、同統計の「性−年齢(5歳階級)別にみた離婚件数」を見ると、男女ともに30代後半から40代が最も離婚件数が多い傾向にあります。これは、結婚生活継続期間のデータと合わせて考えると、結婚後10年から20年程度の期間に、夫婦関係の課題が顕在化しやすいことを示唆しているかもしれません。
離婚の主な原因:その割合と多様性
では、実際に夫婦が離婚に至る原因にはどのようなものがあるのでしょうか。家庭裁判所に申し立てられた離婚調停の動機別データから、その傾向を読み解くことができます。
最高裁判所が公表している司法統計年報によると、令和4年度の離婚調停申立ての動機(複数回答)は以下の通りです。
| 動機(申立人・複数回答) | 夫から | 妻から |
| 性格が合わない | 53.0% | 41.7% |
| 精神的な虐待 | 11.2% | 27.7% |
| 生活費を渡さない | 4.3% | 28.0% |
| 暴力を振るう | 3.5% | 17.5% |
| 異性関係 | 17.5% | 14.0% |
| 親族との折り合いが悪い | 3.1% | 8.8% |
| 同居に応じない | 14.2% | 2.5% |
| その他 | 19.3% | 17.9% |
| 出典:最高裁判所「司法統計年報」家事編より筆者作成 |
この表を見ると、「性格が合わない」が男女ともに最も多い離婚原因として挙げられています。これは、夫婦の根深いすれ違いやコミュニケーション不足が背景にあると考えられます。
注目すべきは、男女間で離婚原因の割合に違いが見られる点です。妻からの申立てでは、「生活費を渡さない」や「精神的な虐待」の割合が夫からの申立てよりも顕著に高くなっています。これは、経済的な問題や精神的な苦痛が、女性にとって離婚を決断する大きな要因となっていることを示唆しています。一方で、夫からの申立てでは、「同居に応じない」の割合が比較的高い傾向にあります。
これらの原因は単独で発生するのではなく、複数の問題が複雑に絡み合って離婚に至るケースがほとんどです。コミュニケーション不足が積み重なり、精神的な虐待につながったり、経済的な問題が夫婦間の不和を加速させたりすることもあります。
離婚と再婚:新たな人生への選択肢
離婚は人生の大きな転機であり、その後再婚を選ぶ人も少なくありません。日本の再婚に関する統計を見てみましょう。
厚生労働省の「人口動態統計」によると、再婚件数は年々減少傾向にありますが、離婚件数と同様に、結婚件数全体の減少と関連している可能性があります。
2022年の婚姻件数のうち、夫婦のどちらか一方または双方が再婚である件数の割合は約26.8%でした。この数字は、約4組に1組の夫婦が再婚を含む結婚であるということを示しています。
また、再婚する年齢にも注目すると、男女ともに30代後半から40代での再婚が多い傾向にあります。これは、前述の離婚時の年齢と重なる部分が多く、離婚後に新たなパートナーとの関係を築く人が多いことを示唆しています。
再婚は、一度結婚生活を経験した上で、新たな関係を築く選択です。前回の経験から学び、より良い夫婦関係を築こうと意識する人も少なくありません。しかし、再婚特有の課題、例えば連れ子との関係構築や、前配偶者との関係調整なども考慮に入れる必要があります。
別居という選択:離婚までのプロセスにおける重要性
離婚に至る前段階として、「別居」という選択をする夫婦も少なくありません。別居は、夫婦関係を見つめ直し、感情の整理をするための時間として機能することがあります。また、離婚に向けて具体的な準備を進める期間として捉えることもできます。
残念ながら、別居に関する詳細な統計データは、離婚や結婚のように網羅的に公表されているわけではありません。しかし、家庭裁判所での離婚調停の申し立てに至る前に、別居期間を経ているケースは非常に多く見られます。
別居の割合や期間は夫婦によって様々ですが、一般的には数ヶ月から数年間に及ぶことがあります。別居中に、夫婦間で話し合いが進み、関係修復に至るケースもあれば、別居が最終的な離婚への布石となるケースもあります。
別居には、メリットとデメリットの両方があります。
メリット:
- 冷却期間: 感情的になっている状態から距離を置き、冷静に考える時間を持つことができる。
- 自己と向き合う時間: 夫婦関係における自分の立ち位置や、今後の人生について深く考える機会となる。
- 離婚のシミュレーション: 実際に一人で生活することで、離婚後の生活を具体的にイメージできる。
- 財産分与や親権などの準備期間: 離婚に向けて法的な手続きや、子どもの問題について準備を進めることができる。
デメリット:
- 生活費の二重負担: 住宅費や生活費が二重にかかる可能性がある。
- 子どもの精神的な負担: 子どもが親の別居によって精神的なストレスを感じる可能性がある。
- 関係修復の難しさ: 別居期間が長引くほど、関係修復が難しくなる場合がある。
別居は、安易な選択ではありませんが、夫婦関係が破綻の危機にあると感じたときに、一度立ち止まって考えるための有効な手段となり得ます。
離婚の背景にある現代社会の課題
ここまで、離婚の割合や原因を統計データに基づいて見てきましたが、これらの数字の背景には、現代社会が抱える様々な課題が複雑に絡み合っています。
経済的な問題
前述の離婚原因の割合でも示されたように、「生活費を渡さない」といった経済的な問題は、特に女性にとって大きな離婚原因となっています。共働きが一般化する一方で、夫の収入だけに依存している家庭では、経済的な不安定さが夫婦間の軋轢を生むことがあります。また、子育てにかかる費用や、教育費の増加なども、夫婦の経済的な負担を増大させ、関係に影を落とす可能性があります。
コミュニケーションの不足
「性格の不一致」という漠然とした原因の背景には、夫婦間のコミュニケーション不足が横たわっているケースが非常に多いと考えられます。日々の忙しさの中で、お互いの気持ちや考えを共有する時間がなくなり、すれ違いが深まっていくことがあります。また、スマートフォンの普及やSNSの利用など、デジタルデバイスが夫婦間の直接的なコミュニケーションを阻害している可能性も指摘されています。
価値観の多様化
現代社会では、結婚や夫婦のあり方、家庭の役割に対する価値観が多様化しています。伝統的な夫婦像に縛られず、個人の生き方を尊重する傾向が強まる中で、お互いの価値観を理解し、尊重し合うことがより重要になっています。しかし、それがうまくいかない場合、夫婦関係に亀裂が入ることがあります。
ワークライフバランスの難しさ
共働き夫婦が増える中で、仕事と家庭の両立は大きな課題となっています。特に女性は、育児や家事の負担が集中しやすく、仕事との両立に苦悩するケースが少なくありません。このアンバランスが、身体的・精神的な疲労につながり、夫婦間の不満や衝突の原因となることがあります。
家族関係の変化
核家族化が進み、地域社会や親族とのつながりが希薄になる中で、夫婦が孤立しやすくなっているという指摘もあります。育児や介護など、夫婦だけで抱え込む問題が増えることで、ストレスが蓄積しやすくなります。かつてのように親族や地域社会が子育てをサポートする家庭が減り、夫婦間の協力関係がより一層重要になっています。
離婚を回避するために:夫婦関係を良好に保つヒント
離婚に関する統計データや原因を見てきましたが、これらは決して離婚を推奨するものではありません。むしろ、離婚に至る原因を理解することで、夫婦関係を良好に保つためのヒントを見つけることができます。
1. コミュニケーションを密にする
最も基本的なことですが、やはり夫婦間のコミュニケーションは非常に重要です。日常の些細なことでも話し合い、お互いの気持ちや考えを共有する時間を作りましょう。感謝の気持ちを伝えたり、不満な点があれば冷静に話し合ったりすることも大切です。
2. 価値観の違いを尊重し、歩み寄る
「性格の不一致」はよく挙げられる離婚原因ですが、これは価値観の違いから生じることがほとんどです。お互いの価値観は違って当然という前提に立ち、相手の考えを理解しようと努め、歩み寄りの姿勢を持つことが重要です。
3. ストレスを溜め込まない工夫をする
仕事や育児、家事など、夫婦を取り巻く環境はストレスが多いものです。一人で抱え込まず、パートナーに相談したり、気分転換になる趣味を持ったり、友人に話を聞いてもらったりするなど、ストレスを適切に解消する工夫をしましょう。
4. 経済的な問題についてオープンに話し合う
お金に関する問題は、夫婦間でタブー視されがちですが、非常に重要な離婚原因です。収入や支出、貯蓄、将来のライフプランなどについて、オープンに話し合い、共通の認識を持つことが大切です。必要であれば、家計管理の方法を見直したり、ファイナンシャルプランナーなどの専門家のアドバイスを求めることも検討しましょう。
5. 感謝と尊敬の気持ちを忘れない
長く夫婦生活を続けていると、お互いの存在が当たり前になってしまい、感謝や尊敬の気持ちを忘れがちになります。日頃から「ありがとう」「お疲れ様」といった感謝の言葉を伝えたり、相手の良い点を見つけて褒めたりすることで、夫婦関係はより良好に保たれます。
6. 必要であれば専門家のサポートも検討する
夫婦間で解決が難しい問題に直面した場合は、家庭裁判所の夫婦関係調整調停(離婚調停とは異なり、関係修復を目的とするもの)や、カウンセリングなど、外部の専門家のサポートを検討することも有効です。第三者の視点が入ることで、問題の本質が見えたり、新たな解決策が見つかったりすることもあります。
まとめ:離婚の「割合」から見えてくる、より良い夫婦関係のために
日本の離婚に関する統計データや割合を見てきましたが、これらの数字は、現代社会における夫婦関係の複雑さや多様性を浮き彫りにしています。離婚の割合が減少傾向にあるとはいえ、依然として多くの夫婦が結婚生活の継続に困難を感じ、離婚を選択しています。
しかし、離婚は決してネガティブな結果ばかりではありません。新たな人生を歩むための前向きな選択となることもあります。重要なのは、夫婦がお互いを理解し、尊重し、そして何よりもコミュニケーションを取り続けることです。離婚の原因や割合を知ることは、私たちの夫婦関係を見つめ直し、より良い関係を築くための貴重な示唆を与えてくれます。
この記事で述べた統計データや原因は、あくまで一般的な傾向を示すものです。個々の夫婦には、それぞれ異なるストーリーがあります。もし、夫婦関係に悩みを抱えているのであれば、まずはパートナーと向き合い、話し合うことから始めてみてください。そして、必要であれば、専門家のサポートも積極的に利用することを検討しましょう。
参考文献・関連情報
- 厚生労働省「人口動態統計」
- 日本の離婚件数、離婚率、再婚件数などの基本的な統計データが網羅されています。毎年更新されており、最新の動向を把握する上で非常に重要です。
- https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1.html
- 厚生労働省「人口動態統計特殊報告 離婚に関する統計」
- 離婚に関するより詳細な統計データ(結婚生活継続期間別離婚件数、親権者の割合など)が掲載されており、離婚の背景を深く分析する際に役立ちます。
- https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1b.html
- 最高裁判所「司法統計年報」家事編
- 家庭裁判所に申し立てられた離婚調停の動機(原因)や、離婚事件に関する様々な統計データが公開されており、離婚の法的な側面や原因の割合を把握する上で有用です。
- https://www.courts.go.jp/app/sihotokei_nenpo/search
- e-Stat 政府統計の総合窓口
- 上記を含め、日本の様々な政府統計を網羅的に検索・閲覧できるポータルサイトです。離婚以外の社会統計も豊富で、多角的な分析に活用できます。
- https://www.e-stat.go.jp/
- 法務省「戸籍に関する手続」
- 離婚に関する戸籍上の手続きについて解説されており、離婚を検討する際の具体的な情報源となります。
- https://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00067.html
- 日本弁護士連合会「離婚」
- 離婚に関する法的な相談窓口や、離婚の種類(協議離婚、調停離婚、裁判離婚など)について詳しく解説されています。
- https://www.nichibenren.or.jp/legal_aid/houre/rikon.html
- 内閣府「少子化社会対策白書」
- 少子化対策に関する白書ですが、結婚・離婚に関する意識調査や、夫婦関係の現状に関するデータが掲載されていることがあります。
- https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/index.html

